魚情報 その1

パリの魚・日本の魚

なぜこんなに種類が違うの?

パリの魚屋の第一印象

パリに到着して、やっぱり気になるのは魚です。そこで、生活が落ち着いたところを狙って、早速魚を見に行きました。で、第一印象は、「結構同じ魚がいるんだ」でした。

アジやサバはそっくりだし、鯛もいる。マトウダイやマグロもいます。それに、カナガシラやヒメジが沢山店頭に出ているではありませんか。これでパリでも魚料理が楽しめそうだなと、一安心です。

しかし、何度か通ってみると、日本では見られない魚も多くいます。例えばCarreletは間違いなくカレイですが、日本とは模様が違います。Barも、どう見ても日本のスズキとは別物です。そうやって見ていくと、最初は同じに見えたアジやサバまで、どうも違うのではないかという気がしてきました。そこで、調べることにしました。

進化の別れが早かった

調べてみて分かったのが、ほとんどの魚が日本のものとは別種だということです。見た目はそっくりでも微妙に違っており、学名が別なのです。太平洋とインド洋には同じ種の魚が結構いるのですが、大西洋種は独立性が強いようです。

それもそのはず、太平洋とインド洋は、マラッカ海峡からオーストラリアの南まで、様々な場所で繋がっていますが、太平洋と大西洋は北極海・南極海で繋がるのみ、南は何とかケープタウン沖の南緯34.8度で繋がるものの、北は一番緯度の低いところでも、カナダの北緯74度、完全な北極海です。これでは、進化の過程で別種になってしまうのも仕方の無いことでしょう。

ところが、数十年前、この進化の境界を人間が崩してしまいました。スエズ運河です。最近では、スエズ運河を通じて、インド洋と地中海の魚が行き来するようになっているようです。例えば日本のクルマエビ、最近ではインド洋でも獲れるようですよ。

魚屋の名づけ方はまちまち

もう一つ気づいたのが、魚屋によって、同じ魚でも違う名前で売っているということです。その典型的なのが、Dorade-Roseです。この名前で売られている魚が何種類いるでしょうか。鯛の形をしていて、色が赤ければ、大抵Dorade-Roseとして売られています。これが魚の名前を同定するのをさらに困難にしているようです。

魚文化の差か

色々調べていくうちに、ひとつの記述を見つけました。

「欧米では、いくつかの種の魚をまとめてひとつの名前で呼ぶことが多いのです。日本のように、それぞれの科の魚全てにそれぞれ違った標準和名がつけられている方が珍しいのです」

なるほど!! という記述ですよね。これはきっと魚文化の差でしょう。日本では昔から魚は重要な食料源で、いろいろな保存方法、加工方法も工夫されてきました。欧米でも、特定の魚種は昔から食料として珍重されていましたが、パリに常設の魚屋さんが増えてきたのは、この10年ばかりのことです。この差が魚の名前の付け方にも現れているのかもしれません。

同じ魚はいないの?日本にいてパリにいないのは?

完全同一種

パリにも数少ないながら、日本の魚と完全同一種がいます。例えばマグロの仲間のクロマグロやビンナガ、カツオの仲間のヒラソウダやマルソウダ、そしてマサバなど、サバ科の魚に同一種が多いようです。他にも、カンパチ、オニカマス、キンメダイなどが学名上同一種と整理されています。しかし、予想以上に同一種は少ないですね。現在は同一種とされていても、将来は別種に分類される可能性もあります。

原種と日本種

学名を見ていて気づくのは、パリの魚には原種が多く、日本の魚には日本種が多いということです。原種は、学名の科名と主名がほぼ同じなので、すぐわかります。例えば、サバのScomber scombrusとScomber japonicusなどです。これは、魚の分類がヨーロッパで開始され、太平洋地域では日本がもっとも早くこれに追従したからでしょう。学名については、学者間での意見の相違も多く、名づけ方も難しいようです。

パリにいない魚

日本でいつでも食べることができるのに、こちらにいない魚は何でしょうか。最初に誰もが思いつくのがサンマです。秋の味覚の代表サンマですが、パリで販売されているのを見たことがありません。フグもいません。フグのたぐいは取れないのでしょうか。

ぜひいて欲しいのに居ないのが、ブリです。ブリは世界中を回遊していると思ったら、実は日本近海の魚でした。しかし、カンパチは日本と同一種が地中海で捕獲されています。カンパチの刺身はブリの味を凌ぐのでカンパチでも手に入ればよいのですが。

種は増え続け、数は減り続ける魚類たち

現在世界には25000種の魚がいると言われています。そして、その数は、年々増え続けています。多くの研究者が研究を続けるといともに、人間の活動範囲が、熱帯雨林に、ツンドラに、深海にと広がるにつれ、毎年100以上の種が新たに発見され続けています。

しかし、魚の数が増えているかと言うと、そうではありません。世界の漁獲量は1990年頃をピークに頭打ちとなり、古くからの主要漁場では減少傾向も見られます。漁業技術の発達に伴い、1950年から1990年までの間に3倍に増えた漁獲量が、技術は進歩し続けているのに頭打ちになったということ、それは世界の漁業資源が減少をはじめた証拠かもしれませんね。

戻る