魚情報 その5

の飼い方

海に遊びに行くと、小魚やカニ、ヤドカリなど、子供が色々なものを連れて帰りたがりますよね。磯場などに行くと、イソギンチャクやヒトデも人気者です。これらの動物を持って帰って飼うのは海から遠いパリでは結構難しいのですが、熱帯魚屋さんに売っている魚なら、もう少し楽に飼えます。また、アサリやハマグリ、ホタテなどの砂抜きをするために、しばらく海水中に浸けておきたいこともあります。そんなことをお考えの方のために魚の飼育方法をご紹介します。

1.事前準備

まずは、ペットショップに行って飼育道具の購入です。セットになったものもありますが、パリで売られているものは淡水魚を対象としており、海水魚には性能が十分でない場合もあるので、良く確認しましょう。

水槽

水槽は大きいほど水質が安定しますが、現実問題としては60リットル水槽が標準でしょう。最低20リットル水槽でも何とかなりますが、それより小さい水槽は淡水系の魚かイソギンチャク程度しか飼えないと思ったほうが安全です。

フィルター

水を浄化するフィルターとしては、とりあえず底面フィルターをお勧めしておきます。底面フィルターの上に海水魚の場合はサンゴ砂を、淡水魚の場合は玉砂利を厚さ5cm程度敷き詰めます。海水魚用のフィルターは本当はオーバーフローが最適なのですが、海水魚数匹の飼育なら、底面で十分だと思います。

ただ、パリの熱帯魚屋さんには、上部フィルターやオーバーフローフィルターはあまり売ってないですね。投げ込み式の小型スポンジフィルターか、密閉型の外部フィルターが主のようです。そうなると、外部フィルターを使わざるを得ないかもしれませんね。

上部フィルターの場合は海水専用品でないと濾過面積が不足しますが、専用品は結構高いものになります。魚を飼わないで、無脊椎動物(ヒトデ、イソギンチャク等)だけなら、投げ込み式のスポンジフィルターでも大丈夫かもしれません。フィルターに関する詳しい情報は熱帯魚飼育の本を見て下さいね。

底面式フィルターの場合、それを稼動させるためのエアレーションシステムも必要です。

ヒーター

パリの冬は寒いので、このヒーターは必須です。魚はゆっくりした水温の変化にはかなり適応しますが、それでも、限界があります。水槽の大きさにあわせたヒーターを買いましょう。

人工海水の素(海水魚の場合のみ)

海水は、出来れば人工海水を使います。本物の海水は腐りやすいので、毎週海水を汲んできて水替えが出来る人以外は人工海水の方が安全です。人工海水を使う場合、濃度を測るためにボーメ計というものも必要です。海水の塩分濃度は約3.5%ですが、河口などではもう少し薄くなります。なお、ホヤ、イソメ、アサリなど、海水中のプランクトンを餌にしている動物の場合、人工海水だけでは長期間飼うのは難しいでしょう。

以上の準備をして、水槽に水を入れ、フィルターに水をまわします。このセットをした状態で1週間位水を廻しておいてから生物を入れると安全です。

あと、もし生物を購入ではなく採取で入手するなら、生物を持ち帰るための道具として、蓋付きのバケツと電池式のエアレーション器が必須です。これがないと魚類は自宅に帰りつく前に、まず全滅します。バケツはなるべく大きいほうがいいのですが、大きいと重くなるので、15リットルくらいが目安です。

2.飼えるもの、飼えないもの

海の生物

海の魚は一般的には川の魚に比べて弱くて飼いにくいのです。これには色々な理由がありますが、主要因は、@海水魚が環境の急変に弱いことと、Aバクテリアによる水質浄化作用の完成に時間がかかることです。

川や湖より海の方が水の絶対量が多いですから、@の海の環境が急変しにくいことはすぐに想像できると思いますが、実は環境の急変に強い生物もいます。それが磯に住む生物です。磯溜りは急激な水温上昇や、塩分濃度の変化が起こるにもかかわらず、そこにいる生物は生き続けます。ですから、磯溜りにいるような生物は丈夫で飼いやすいのです。

飼いやすい代表的な魚は、ハゼの仲間、カサゴの仲間、コエビなどです。イソギンチャクやヒトデなども飼いやすい生き物です。逆に難しいのは青物(アジ、イワシなど)です。とりあえず海岸で採取したら、電池式ブクをセットしたバケツに魚を入れ、2〜3時間ほど様子を見てみましょう。それで死ぬような魚は、まず飼えません。

水槽に入れる魚の量は、60cm水槽なら全部で50グラムぐらいにすると安全です。ということは、10cmのカサゴを入れたら、それだけで軽くオーバーします。つまり、水槽に入れる魚は5cm以下のものにしたほうが安全ということです。(もう少し専門的には、濾材の重さの30分の一までとか言われてますが、最近の濾材は多孔質なので、この計算式だけでは判断できません。)

なお、イソガニは陸地がないと弱るので、魚と一緒に飼うのは難しいでしょう。ふなむしとイソガニはカメのように半陸地式の水槽を作る必要があります。

Aについても簡単に説明しておくと、生物や餌の残りによる海水の汚れはまず毒性の強いアンモニアの形で水槽中に生じます。これをバクテリアが分解して少し毒の弱い亜硝酸塩に、その亜硝酸塩をさらに別のバクテリアが分解して殆ど無毒の硝酸塩に変えるのです。このバクテリアたちが増殖するのに、アンモニア分解役が2週間、亜硝酸分解役が1.5ヶ月ほどかかります。つまり、この間は魚たちには大変危険な期間なのです。

海水では、淡水に比べて、このバクテリアが増殖しにくいのです。このバクテリアたちは酸素を大量に消費するので、エアレーションも必須なのです。詳しくは熱帯魚または海水魚の飼育の本を見て下さいね。

淡水の生物

淡水の生物は海水性の生物に比べて圧倒的に飼い易いので、できれば最初は淡水の生物を飼うことを薦めます。小さな川や池などで、小魚を採取してくれば、わりと簡単に買えます。もちろん、ペットショップで購入する場合も、淡水魚のほうが簡単です。

基本的買い方は、上の海水魚の場合と同じです。バクテリアがきちんと増殖さえすれば、水替えは月に一度でも十分です。

淡水性生物の中でも、金魚は特に生命力が強く飼い易い魚です。熱帯魚の中では、グッピーやプラティが飼い易い上に、繁殖も楽しめるので良いのではないでしょうか。ネオンテトラなどの小型のテトラ類は弱いので、最初は少なめにしましょう。

4.餌

餌は大抵の魚は熱帯魚用のフレークフードで大丈夫です。イソギンチャクや磯エビなどもこのフレークフードを食べます。釣餌の残りの青イソメなどを生きたまま入れると、ハゼなどが喜んで食べますが、一部は生き残って砂の中に潜ってしまいます。

熱帯魚用のブラインシュリンプも良い餌です。特に孵化して24時間以内のブラインシュリンプ幼生は栄養価が高いのです。但し、卵の殻が水槽を汚すので、別の入れ物で孵化させてから、水槽に入れてやります。

ヤドカリやヒトデはあさりの剥き身なども大好物です。あさりの内臓部分を水で良く洗ってから入れてやりましょう。

ちなみにウニはアオサやワカメを食べますが、この餌として与える以外は水槽中には海草を入れないほうが良いでしょう。特にワカメなどは溶けて水を汚す原因になります。ウニは魚の死体など、何でも食べる雑食性ですので、えさの掃除役としても面白いかもしれませんね。

5.メンテナンス

最初の1ヶ月くらいはなるべく餌を少な目にして、海水が汚れるのを防ぎます。水槽に入れる魚も出来るだけ小型のものを少しだけにします。1ヶ月くらいすると水槽も安定するので、それから魚を増やします。

時々ボーメ計で塩水濃度を測り、濃くなっていたら真水を足します。(薄くなることは通常はありませんが、雨などが降り込む場所では可能性があります)水替えは1ヶ月〜2ヶ月に1回、半分の量をすれば十分でしょう。生物濾過がうまくいっていれば、半年に1回くらいでも大丈夫です。(生物の量に依存します)

長期間(半年以上)飼うなら、フィルターの掃除なども必要ですが、底面フィルターの場合下手に掃除をすると逆に魚を弱らせることになりますので、十分注意しましょう。

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